ロシアの徹底した少子化対策、ベンチャーキャピタリスト大坪祐介氏(08/9/11)
ロシアでは平均年収にも匹敵する育児手当が支給されるなど強力な少子化対策が推進されている。写真は赤の広場、レーニン廟前の親子。撮影は筆者(大坪祐介UMJロシアファンド・ジェネラル・パートナー)による
やや旧聞に属する話で恐縮だが8月22日、わが国では舛添厚生労働大臣が閣議後の記者会見で少子化対策の一環として妊婦健診や出産育児一時金の拡充を検討する旨を表明、来年度予算に盛り込むべく検討を開始との報道がなされた。
同じ日付のモスクワタイムズ紙。ロシアの2008年上半期の新生児数は81万1500人と、前年同期(75万3000人)に比べ、7.8%増加した。これまでのところ、新生児数は死亡者数をわずかに上回っている。これはすなわち、ロシア最大の懸念事項であった人口減少に歯止めがかかりつつあることを意味する。同通年の新生児数は、前年比5.5〜6.0%増、人口減少は昨年のマイナス0.4%から今年はマイナス0.1%に改善する見込みである。2008年の予想人口は1億4200万人。なお、平均寿命(2007年)も男性61.6歳、女性74.7歳と年々着実に改善している。
こうした傾向の背景には、経済成長に伴う生活環境の改善もあるが、ロシア政府による強力な少子化対策があることを忘れてはならない。ロシアの人口は1993年をピークに、ここ数年毎年70〜80万人自然減少している。日本をはるかに上回るペースでの人口減少が続いていることになる。
国連の人口予測(2006年)によれば、ロシアの人口は2050年には1億783万人と、同じく人口減少に悩む日本とほぼ同水準(1億251万人)となる危機的状況なのだ。だからこそロシア政府は状況改善のために相当の努力を払ってきた。
2005、2006年と当時のプーチン大統領は教書演説の中で人口問題に触れ、人口増加のための具体的な政策に取り組むことを公言した。特にロシア国民に説得力を持って迎えられたのは、2006年12月に立法化された出産・育児手当の増額である。その目玉は2007年1月1日以降に生まれた2人以上の子供に対し、25万ルーブル(直近レートで約105万円)の育児手当を支給するというものである。
「家族の年 2008」の看板
育児手当といっても出産時に現金支給されるものではなく、子供が2歳6カ月以上になってから、住宅・教育向けの支出、あるいは母親の労働年金に充当できるというものである。支給額はインフレスライドする。25万ルーブルとなると、平均的なロシア人の年収(7月の名目賃金は1万7500ルーブル)に相当する額である。これが今年上半期の新生児数増加に結びついたことは疑う余地はない。
ロシア政府は2008年を「家族の年」と定め、社会の最小構成単位である「家族」の生活基盤を安定させる。こうした人口減少に歯止めをかける地道なキャンペーンも行っている。
地方政府も同じで、6月12日の「ロシアの日」に生まれた子供に特別プレゼントを贈呈、しかもその9カ月前の9月12日を「家族計画の日」として祝日にするといった悪乗りしすぎの政策も見られる。連邦政府の家族対策には、これまで省みられなかった社会的弱者への支援策も含まれており、ロシア社会が着実に安定化の方向に歩みつつある証左といえよう。
もっとも、テレビコマーシャルや、市内にあふれかえる「家族の年」の広告にかかる莫大な費用を、もっと有効に使う道がありそうにも個人的には思える。
現在の日本の出産育児一時金は35万円で今後増額を検討とのことだが、本気で少子化対策を打ち出すのであれば、せめてロシア並みの手当ては欲しいところ。結局のところ、少子化対策の成否は「豊かな政府」とあわせて政策を強力に推し進める「強い政府」の存否にかかっているのかもしれない。福田首相が辞任を表明したその日のロシアの新聞の一面は、麻酔銃でアムール虎を仕留めたプーチン首相の写真であった。
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posted by doloroso at 21:11| 東京

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